当院の形成外科で
行う処置について
形成外科は、整形外科や美容外科との違いがわかりにくい、と言われます。整形外科は骨、筋肉やそれを支配する神経からなる「運動器」の機能的改善を目標に治療する外科で、形成外科は生まれながらの異常や、ケガや病気によって体の体表に生じた異常改善を目的にした外科です。身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、様々な手法や特殊な技術を駆使して機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくする事を目指します。このため、美容外科とは守備範囲が少しかぶるところが出てきます。
当院では、ケガややけどの急性期の治療、ケガや手術後の傷あと(瘢痕)の治療、皮膚・皮下腫瘍の切除、ワキガや多汗症の治療、加齢による眼瞼下垂症や逆まつげ等のまぶたの治療、巻き爪の治療など、「体表の問題に対するかかりつけ医」として皆様のお役に立ちたいと考えております。
傷やケガの種類と治療方法
擦り傷(擦過傷)
地面などで皮膚を擦りむいてできるケガです。通常、出血は少ないものの、砂や土などの異物をきれいに落とした上で治療することが重要になります。残ったままで治ってしまった場合、イレズミのような状態となることがあります(外傷性刺青)。
かさぶたを作らないように、適度な湿潤環境を整えることで痕がきれいに治りやすくなります。当院では傷にあったドレッシング材(湿潤環境形成を目的にした創傷被覆材)を選択し、きれいに早く治します。
切り傷(切創)
刃物や鋭い紙、ガラスなどで皮膚を切ってできるケガです。出血の程度はさまざまですが、外見上は深さが分かりにくいこともあり、早期の受診が必要です。
程度によっては、縫合処置が必要になり、その場合も早期であることが重要となります。
(時間が経つと、きれいに縫合するために創縁をリフレッシュする処置を追加しなければいけない場合がありますので、受傷後早期の受診をお勧めします)
刺し傷(刺創)・咬み傷(咬傷)
尖ったものが刺さってできる傷、動物などに咬まれてできる傷は、傷口は小さいものの、深く組織が損傷していることがあります。また金属に付着したサビや異物、牙についた細菌により、破傷風や皮下膿瘍が生じることがあります。異物除去と十分な洗浄、抗生剤の投与が大切です。
咬傷は、程度によってはすぐには縫合せずに、後日感染しないことを確認した後に縫合することがあります)
傷が深い、病院に行く前の
応急処置
1傷口を洗い流す
通常、最初に行うべきなのは、流水による傷口の洗浄です。使用するのは蛇口から出る水道水で構いません。
※出血がひどい場合には先に止血を行います。
2止血する
傷口にハンカチ、清潔なガーゼなどを当て、その上から手のひらで圧迫して止血します(直接圧迫止血)。
その際、以下の点に注意してください。
- 出血を緩やかにするため、出血部位を心臓より高い位置にしてください。
- 圧迫する手のひらはできるだけ動かさないでください。傷口の様子が気になりますが、その状態を維持します。
- 四肢をケガしたときなど、その根元を縛る方法は、加減が難しく、縛った先に血流障害が生じて組織が腐ってしまうことがあります。絶対に行わないでください。
- 以上の処置をした後、医療機関を受診してください。
このようなときは迷わず病院へ
一見程度が軽い様でも、以下の場合は医療機関にかかる様にしてください。
- 痛みが強い、出血がひどい
- 傷が深い
- 錆びたもの、汚れたもので傷ができた
- ガラスなど異物の混入が疑われる
- 動物に咬まれて傷ができた
やけど(熱傷)の重症度と
治療方法
やけど(熱傷)は、その深さによってⅠ度~Ⅲ度に分類されます。一般に、水ぶくれができるようであれば形成外科の受診をおすすめします。はじめは水ぶくれがなくても、時間が経つと出てくることも多いので、注意しましょう。高温でなくても、湯たんぽのように44℃〜50℃程度のものでも長時間接触していると低温熱傷を生じることがあり、多くの場合、見た目以上に深いことが多いため、迷わず受診するようにしましょう。
いずれの場合も、適切な治療によって、早く、きれいに治る可能性が高まります。
深度 | 皮膚に見られる症状 | 色調 | 痛み | |
---|---|---|---|---|
Ⅰ度(EB) | 表皮 | 乾燥 | 紅斑 | 痛み(+) 知覚過敏 |
浅達性Ⅱ度(SDB) | 表皮~真皮 | 湿潤水ぶくれ | 薄赤 | 強い痛み 知覚あり |
深達度Ⅱ度(DDB) | 表皮~真皮 | 湿潤水ぶくれ | やや白色 | 痛み軽度 知覚鈍麻 |
Ⅲ度(DB) | 表皮~脂肪組織 | 乾燥 硬化 炭化 |
蝋色 黄色~赤茶色 黒色 |
無痛 |
Ⅰ度・浅達性Ⅱ度熱傷の治療
軟膏、創傷被覆材による治療が基本です。
Ⅰ度、浅達性Ⅱ度熱傷の場合、真皮が残っているため表皮の再生は可能です。多くの場合、傷跡が残らずに治癒します。湿潤環境をつくり、上皮化を促します。
しかし、創感染を起こすとやけどが深くなるため、治癒に時間がかかります。創洗浄、抗菌薬の外用などが必要になることもあります。
深達性Ⅱ度熱傷~Ⅲ度熱傷の治療
深達性Ⅱ度熱傷、Ⅲ度熱傷では後遺症が残る可能性が高くなります。
特にⅢ度の場合、血流が失われ壊死が起こります。壊死した部分は切除が必要になります(デブリードマン)。壊死の範囲が狭ければ上皮化を期待できますが、治癒に時間がかかるため、植皮術(皮膚移植)が選択されることもあります。
受診前の応急処置
流水をあてて患部を冷却します。冷却により、熱による損傷の深化を防ぎ、痛みも軽減されます。
なおその際、以下の点にお気をつけください。
- 冷却は、20分ほど継続してください。
- 保冷剤は使用しないでください。凍傷の原因になることがあります。
- 衣服の下でやけどを負っている場合には、無理に衣服は脱がず、その上から流水を当て冷却します。
- 手指のやけどを負った場合は、先に指輪を外してください。後に指が腫れ、指輪を切断しなければならないことがあります。
傷あと(瘢痕)の
治療についてのご案内
手術や真皮深部に至るケガでは傷あと(瘢痕)が残ります。当院では瘢痕の修正を行っております。瘢痕が消えるわけではありませんが、傷をシワに隠して目立ちにくくしたり、ひきつれを解除することが可能です。
また、手術を希望されない場合、貼り薬や注射による治療も可能です。
いずれの治療の場合も、健康保険が適用されます。